Urushi

古代から現代に至るまで
続く伝統的な漆工芸

日本の漆工芸の歴史は古く、古代にはすでに漆器が存在しており、奈良・平安時代には美しい模様や彫刻が施された漆器が作られるようになりました。鎌倉時代には、茶道具としても重要な役割を果たし室町時代には金箔や銀箔を施した漆器が多く作られるようになりました。江戸時代には漆器の名工が登場することで漆器の芸術性が高まり、多様な漆工芸品が作られるようになりました。日本の漆工芸は現在でも日本文化の象徴として大切にされており、世界的にも高く評価されています。伝統を継承しつつも常に前衛的な取り組みを重ね、現在も漆塗の新たな可能性を追求されています。

京漆の魅力 日本文化の象徴
世界中から愛される
優美で繊細な京漆

16世紀の大航海時代には、ポルトガル人やオランダ人などのヨーロッパ人が日本との交流を深め、日本の文化や工芸品に興味を持ちました。その中でも漆器は、とても興味深いものであり、多くの人々が収集するようになりました。当時、ヨーロッパにはなかった工芸品であったため、漆器に用いられる漆自体も「ジャパン」と呼ばれるようになりました。フランスの王妃であったマリーアントワネットは漆器を含む多くの日本の工芸品を収集することで知られています。

漆は東アジアの限られた地域でのみ育ち、現在日本国内生産量は需要のわずか2%となっています。漆は、採取に十分な大きさに木が育つまでに12~15年を要し、1本の木からたった200mLしか取れない大変貴重な樹液です。また漆は酸・アルカリ・塩分に強く、耐久性・堅牢性、抗菌性など様々な機能特性を兼ね備えています。漆は適切な環境下(25℃前後、70-85%RH)で、漆に含まれる酵素が活性化することにより固化するため、80%硬化するのに約3ヶ月、完全に硬化するのに約8年を有します。表面に1層塗っては硬化させ、その表面を削って滑らかにした上にまた1層塗っては硬化させることを繰り返し、ひとつの作品を完成させるのに半年から1年を有することも珍しくありません。

京漆は、京都の茶の湯の文化と合わせて発展しました。美しい光沢をもつ貝を使った螺鈿や、金粉・銀粉などを施した蒔絵といった技法が、華やかな気品と風格を与え、優美で繊細な京漆の魅力を更に引き立たせています。

漆工芸は、一点一点職人の手によって丁寧に仕上げられるため、それぞれに個性や風合いがあります。その中でも京漆は、技術やデザイン、品質の高さが評価され、日本文化の象徴として歴史や文化を伝える重要な役割も担っています。京漆の美しさや高い品質は、国内だけでなく世界中から多くの人々に愛されています。

この美しい漆工芸、ならびにその伝統工芸を支える様々な技術を次の世代に引き継いでいくためにも、misoraは漆の植栽面積を増やし良質の漆を生産する活動などを支援していきます。

京漆×アクリル 不透明な漆と透明なアクリル
色と光の共演

misoraは、100年後もなお人々の心を惹きつけてやまない美しさを追求し、アクリルに漆を塗り重ねる技法を用いて、色と光の共演による心豊かな空間 を彩る提案をしています。アクリルは、従来の木に漆を施すのに比べ、温度 や湿度が変化しても伸縮や膨張をおこしにくく、日本国外の様々な地域でも 安心してお使いいただけます。

函・風光る

あじさいの函

王妃の函

蝶の舞

あじさいの丸函

森の函

漆を手掛ける漆芸家 革新的な精神を受け継ぐ
鈴木表派

京都を代表する漆芸家の一派。伝統を継承しつつも常に前衛的な取り組みを重ね、漆塗の新たな可能性を追求し続けてきました。 特に三代目(鈴木雅也)は、透明なアクリル樹脂に不透明な漆を塗り重ね、異なる素材の特性を活かした斬新な視覚効果を狙った 作品を積極的に制作しました。また彼の革新的な精神を受け継ぐ数多くの多才な弟子達は、日本の漆芸を支えるため国内外で幅広く活躍しています。misoraの作品は、この三代目が生み出したアクリル樹脂に漆を塗り重ねる技法を用い、四代目(鈴木さえ子)を 中心に制作されています。

三代目(雅也氏)の主な受賞歴

1964年
第3回日本現代工芸美術近畿展 京都府知事賞受賞
1966年
京展 市長賞受賞
1973年
「オブジェ 連鎖するかたち」第5回日展 特選受賞
1977年
「森の函」明日をひらく日本新工芸展 箱根彫刻の森美術館賞受賞
1993年
「透胎 こすもすのはこ」第3回日工会展 内閣総理大臣賞受賞
1996年
京都府文化賞功労賞受賞
1998年
京都市芸術功労賞受賞
2011年
「函・風光る」第43回日展 内閣総理大臣賞受賞

三代目(雅也氏)のコレクション

東京国立近代美術館 / 京都国立近代美術館 / 京都市美術館 / 京都文化博物館 / 圓山記念・日本工藝美術館 / 豊田町香りの博物館 / ジョンソン・アートコレクション(ウィンコンシン州)・シアトル美術館(ワシントン州)・デンバー美術館(コロラド州)・以上アメリカ / ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)

▲「時と光の中に」
1978年作(京都市京セラ美術館)

▲「連鎖するかたち」
1973年作(東京国立近代美術館)

▲「潮騒の函 」
1998年作(シアトル美術館)